大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和44(行ツ)15 判決

主 文

原判決を破棄する。

被上告人の本件控訴を棄却する。

控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

理 由

上告代理人榎本精一、同石葉泰久の上告理由について。

上告人は、昭和二六年二月二三日、第一審判決添付別紙(二)記載の区域(以下、

本件区域という。)を含む区域について石灰石、ドロマイトを目的とする鉱業権の

設定の出願をしたが、本件区域は国有林野であつたため、資源庁長官と林野庁長官

との諒解により右出願についての鉱業法施行法七条一項の通知は省略されていたも

のであるところ、昭和二七年三月三一日、右通知がされないまま、訴外D農業協同

組合(以下、訴外組合という。)が国から自作農創設特別措置法四一条により売渡

を受けて本件区域の土地所有権を取得した。その後被上告人は、昭和三一年三月一

日付文書をもつて、訴外組合に対し、本件区域につき、右上告人の出願があつた旨

の鉱業法施行法七条一項の通知をし、訴外組合は、その通知に基づいて、昭和三一

年三月二八日、本件区域について石灰石を目的とする鉱業権の設定の出願をした。

原判決(その引用する第一審判決を含む。)は、以上の事実を確定したうえで、訴

外組合は同法七条に規定する優先権を有するものであり、したがつて、上告人に優

先するものとして、右訴外紙合に与えられた許可処分にはなんら違法の点はない、

とするものである。

これに対し、所論は、上告人の前記出願から五年余も経過した後にされた右訴外

組合の出願につき同条による優先権を認めるべきものとした原判決は、同条の解釈

を誤つたものである、と主張する。

案ずるに、鉱業法施行法七条は、従来土地の所有者においてなんら公法上の制限

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を受けることなく行なうことのできた追加鉱物の掘採が、現行鉱業法(昭和二五年

法律第二八九号)施行(昭和二六年一月三一日)後は、鉱業権によらなければ行な

いえなくなつたことから、経過的措置として、鉱業法二七条の原則を一部変更し、

土地の所有者に対し優先的な権利主張の機会を与えてこれを保護しようとするもの

にほかならない。しかして、鉱業法施行法七条一項は、「新法の施行の日から六箇

月以内に追加鉱物を目的とする鉱業権の設定の出願……があつたときは、通商産業

局長は、その出願地に係る土地の所有者に対し、その旨を通知しなければならない。」

とし、同条二項は、「土地の所有者が前項の通知の到達の日から三十日以内に当該

追加鉱物を目的とする鉱業権の設定の出願をしたときは、その所有する土地の区域

については、その者は、新法第二十七条の規定にかかわらず、他の出願……に対し

優先権を有する」と規定するのであるが、右規定によれば、一項所定の通知をしな

ければならないのは、鉱業法施行の日から六箇月以内に土地の所有者以外の者から

出願があつた場合に限られるのであり、したがつて、右期間内にその出願がなかつ

た場合には、土地の所有者の右期間経過後の出願について同条による優先権を認め

る余地はないのである。以上の点から考えれば、同条の規定の趣旨は、鉱業法施行

の日から六箇月以内に土地の所有者以外の者の出願があつた場合には、その機会に

通商産業局長の通知により土地の所有者の注意を喚起することとしてその利益の保

護を手厚いものとするとともに、他方、土地の所有者の出願についてはそれが右通

知後三〇日以内にされた場合にのみ優先権を認めることによつて手続の促進をはか

り、もつて当該出願をした土地の所有者以外の者の地位を長期にわたつて不安定な

状態に置くことを避けようとするところにあるものと解される。そして、同条は、

右通知をすべき期間については別段の規定を設けていないけれども、ことがらの性

質上、当然、それが遅滞なくされることを予定しているものというべきである。

以上述べたところからすれば、右通商産業局長の通知には通常ある程度の日時を

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要するものであるところから、同条一項所定の鉱業法施行後六箇月に同条二項所定

の三〇日を合わせた期間を経過したのちにされた土地の所有者の鉱業権設定の出願

について同条による優先権を認めるべき場合がありうることは否定しえないとして

も、それにはおのずから法の予定する一定の限界があるものというべきであつて、本

件における上記のような事情のもとに、鉱業法施行後五年余も経過したのちにされ

た訴外組合の出願については、もはや同条による優先権を認める余地はないものと

いわなければならない。�

そうすると、論旨は理由があり、所論原審の判断は、鉱業法施行法七条の解釈適

用を誤つたものであつて、その違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、

その余の論旨について判断を加えるまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、

訴外組合の前記出願に優先権があることを前提としてされた本件許可処分の取消し

を求める上告人の本訴請求は、正当として認容すべきであり、これと同趣旨の第一

審判決は正当であるから、被上告人の本件控訴は、その理由がなく、これを棄却す

べきものとする。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、九六条、

八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 下 田 武 三

裁判官 大 隅 健 一 郎

裁判官 藤 林 益 三

裁判官 岸 盛 一

裁判官 岸 上 康 夫

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